スマート農業で離農を防ぐ!九州大学との共同研究スタート

※掲載内容は取材当時のものです。

プロジェクト概要

 2022年4月、九州大学とキュウリの自動栽培システムについての共同研究をスタートさせました。現在、国内農業では、就農人口の減少といった大きな課題が存在します。このままでは、長年培われた生産技術が途絶え、安定的な食糧の確保が難しくなってしまいます。この課題を解決するためには労働力を軽減しながら安定的に収穫し、一定価格で市場へ供給できる営農環境が必要不可欠となります。そのため、当社と九州大学大学院農学研究院は、「キュウリの自動栽培システム」の開発に着手しました。食料安定供給に対する社会課題を、スマート農業で解決し、未来の農業に新しい種を植えてまいります。

welzoプロジェクトメンバー

  • 尾崎 剛教

     

    BIZ PROMOTION DIVISION アグリビジネス課 研究農場農場長

国立大学法人九州大学プロジェクトメンバー

  • 岡安 崇史

     

    国立大学法人九州大学 大学院農学研究院 生産環境科学部門生産システム科学講座農業生産システム設計学 教授

Q1 共同研究で実施すること

尾崎農場長当研究農場は敷地面積約1,000坪の中にビニールハウスを5棟構えています。施設内には高性能カメラや各環境測定機器を設置し、得られるデータで日々作物の生育状況を評価しています。今後は蓄積したデータをもとに植物の生育にとって最適な環境条件(温度や湿度など)や栄養条件(水や肥料など)を導き出し、最終的にはAIによる一貫した栽培管理を行うことを目的としています。現在は岡安先生とともに、「キュウリの自動栽培システム」の開発に着手しています。

岡安先生今回の「キュウリの自動栽培システム」は、低コストでキュウリの収量を倍増させる自動栽培システムの開発が目的です。AIがキュウリの収穫量を減少させる要因を早期に特定し、自動で空調管理、施肥、水やりを行うシステムを開発します。

尾崎農場長今年度中にAIのラーニングを開始し、 自社システムの開発を実施していく予定です。 また、このプロジェクトでは、「再生産可能」が、一つのキーワードです。システムが、生育環境や栄養情報だけでなく、植物の求めに応えることで、誰が栽培しても同じような品質、同じくらいの数量生産が出来るよう取り組んでいます。また、現状各農家さんが生産している収量では、企業や家庭を支えるのに満足できるものではありません。そのため、収量の増大に取り組んでいます。現在、研究対象としているキュウリでは、一般的な反収が20~25tといわれていますが、我々はその2倍の反収50tを目指して取り組んでいます。

岡安先生反収の拡大には、豊富な栽培知識・ノウハウが欠かせません。株式会社welzoのグループ会社には、株式会社ジャットという農家への栽培指導を行う、栽培のプロ集団がいます。我々はハウス内で撮影した栽培状況の画像を、ジャットの皆様にも見てもらい、植物が今、何を求めているのかをAIに学習させていくことで、そのノウハウを見える化していきます。

Q2 共同研究への期待

岡安先生私はこれまで機械工学を主に取り組んできましたが、その機械工学をハウス栽培で活用することで日本の農業をサポートしたいという思いから、共同研究をスタートしました。現在、国などがスマート農業の取り組みを支援しているケースもあるが、企業として取り組んでいる事例は多くはなく、素晴らしい取り組みだと思います。

尾崎農場長私は、自身で農業法人も経営していますが、土壌成分や天候等、植物の生育環境は様々で、一つの成功事例を横展開しても同様の成功体験が得られるわけではありません。そういった問題を、IoTでフィードバックできるようにし、農業が成長産業になれるように取り組みたいと思っています。

岡安先生IoTと農業の親和性を高めることで、農業はスマート農業として、変化することができると考えています。このプロジェクトでは、農家さんの作業省力化も実施しますが、生産する作物の品質を高めることで、手をかけて育てたものが確実に利益につながる仕組みづくりも狙っています。農家さんが手間をかけた分が、きちんとした価値で販売される状況を作り出すことで、一つの産業として今以上に農業が魅力あるものにしていきたいです。

尾崎農場長岡安先生がおっしゃる通り、我々が直面している課題として、農業従事者が減少しているという大きな課題があります。2000年時点で389.1万人だった農業従事者数は、2019年には168.1万人まで減少しています。新規就農者の約4割は5年以内に離農しているというデータもあり、このままでは、長年培われた生産技術が途絶え、安定的な食糧の確保が難しくなる可能性があります。この問題の解決に向け、生産技術・ノウハウをAIに蓄積させることで、食料の安定供給をスマート農業によって実現させることも重要だと感じています。

Q3 共同研究で目指す将来像

尾崎農場長この共同研究のハウス内は、常にネットワークにつながっており、作業を自動化するため、新たな知見やノウハウが得られた際も機械をアップデートすることで対応できるなど、今後の拡大可能性を多くもっています。

岡安先生そういった意味では、現在は研究早期化の為、収穫回数の多いキュウリで試験をしていますが、将来的にその他の野菜での研究がなされると、農家さんで少量多品種の生産も可能になります。野菜は、旬の時期に大量に売ると、価格が抑えられてしまうというネックがありますが、少量多品種で品質の良いものを生産できれば、差別化につながり、収入も安定します。この共同研究で実現可能な将来には、様々な希望を持つことが出来ますが、やはり一番は、農業という産業が就職の一つの選択肢になるようにしていきたい。それを、研究農場で開発するスマート農業で実現していきたいと考えています。

尾崎農場長また、スマート農業の活用により農家さんの生産効率化が図れ、収入的にも豊かになると、更なるプラスアルファの取り組みにも期待できるかもしれません。日々、栽培に追われる生活から解放されることで、農業分野に於ける各種イノベーションをもたらす基盤になることもできるのではないかと考えています。

岡安先生九大としては、当然スマート農業のシステムを開発することも重要です。ただし、システム開発以外に、農業でITを活用できる人材の育成も同様に重要です。この共同研究の農場を舞台に人材育成にも取り組み、将来のスマート農業を支える人材を輩出していきたいと考えています。

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